独立開業や出店を目指す方は、多くが最初に出店候補地となる物件探しから行動してしまう傾向があります。しかし、確固たる計画性、戦略、作戦、ストーリーを持たずして物件を決める行為は非常に問題です。

たしかに、出店場所を決める行為は出店計画では一番最初の行動です。

しかし最初の決断ゆえに、先々の明暗を分けることになるのです。

まずは客層を明確にする

一般的に出店者は、 すべて物件探しから開始し、気に入った物件を早々に先考えずに契約しようとする傾向があります。
しかしそのまま計画を進めてお店が完成したとしても、思いのほか客が来ない。あるいは、来てほしい客層以外の客ばかりが来る。

一度物件を決め店が完成してしまった場合、これらは軌道修正はとても困難となるのです。こうした結果の原因は、映画やドラマに例えると脚本ありきの計画ではなく、ロケ地を先に決めて、物語を後で考えた計画とも言えます。

物件探しは本当に来てほしい客層を基準に選ぶ!

本来、出店地を特定する以前の段階として、まずは客層を絞り込みましょう。

どんなお客様に利用してもらいたいのか?
老若男女だれでも来れる店?
若い世代が多く集まる店?
富裕層が利用する店?
子どもたちが喜ぶ店?

これらそれぞれ脚本は変わるはずですし、ロケ地(出店地)が変わるはずなのです。

鉄則として、出店地は呼びたい客層が住んでいるところ、あるいは多く往来しているところでなければ意味がありません。開業、出店の計画は脚本のごとくストーリーが重要です。そのストーリーの演出、背景となる舞台セットが店舗です。物件を探す基準は客の満足を満たすためのロケーション、撮影地を探すという視点なのです。

旧職場での基準で物件を選んではならない

多くの出店者は、物件を探しにおいて旧職場と同等の規模の広さや立地条件を好物件と捉えがちで、どうしても、大きめの規模(面積)の物件を選ぶ傾向があります。

旧職場での労働リズムが根強く染み付いた感覚から、同じような広さ、同じような人員構成で運営を始めれば、うまくいく錯覚を抱きがちなのです。しかし、旧職場はあくまでも別人の店であり、第一歩目となる自分の店とでは根本的に基準が異なるのです
。旧職場で従業員として身を置いてきた環境と同規模の店舗を得たとしても、順調な運営ができるかどうかは疑問です。

はじめての開業なら、第一ステップとして小規模な規模を目指せ!

特にはじめての開業、出店なら、中型~大型店舗ではハードルが高いのです。はじめての開業で個人事業主として独立するのであれば、欲張らず小規模店舗での開業を目指しましょう。

小規模店舗を出店し、経営者として小さな成功を重ねてゆき、いずれ店舗の規模拡大、多店舗展開など、第二ステップ以降を考えるべきです。最初から、大規模店舗すぎると一つめの店舗が短命のまま退店になる可能性も高まります。

いくら頑張っても利益が出せない物件を選んでしまう

どんな好物件だと思えても運営上で収支の採算に合いそうか?という視点は必ずチェックするべきです。

”きちんと利益が出せるか”

という感覚です。

物件に関しては、都会、町、地方によって家賃、敷金、礼金など、初期投資額面の費用は様々です。

「なんとなくこの場所なら上手くいくのでは?」

出店者はこのような曖昧な基準と安易な思い込みで行動に走る危険性があります。

物件は、家賃が高額だが不動産初期投資総額(敷金、礼金など)は安い。
あるいは、家賃は安いが不動産初期投資総額が高すぎる物件もあります。
これら両方共、それぞれの危険性をはらんでいます。

チェックは「家賃」と「初期投資総額」の2方向で検証!

家賃は、毎月の支払額を左右する要素です。
運営が始まり来客は多くて忙しいが何故か思うように利益が出ない。
この原因に高額家賃が関与するのです。まさしく毎月の収支(採算性)に影響するからです。

「この立地なら、家賃が高くても人は多く集まるに決まっている!ここなら勝てる!」

これは根拠のない思い込みということです。どんなに立地が良くても重要なのは収支バランスです。
安易な判断は禁物です。


一方、初期投資額が高額なら、これは開業時の総予算バランスに影響を及ぼします。
誰でも必ず開業費用に限られた上限額があるはずです。

総額予算のバランスをまるで気にせずに不動産取得費を先に払い、その後の店舗工事予算、様々な買物予算、すべてが予算不足という混乱状況に陥る危険性があります。

どんなに好物件と思えても、まずは冷静に、自身の予算バランスの検証をしましょう。もし予算バランスが合わないほど高額な不動産取得額を取られるようなら、結果的に出店費用の予算不足に繋がります。

物件選びの基準は、家賃(毎月の採算)と不動産取得総額(予算配分)この両側面の徹底検証です!

一、家賃で、将来の収支サイクルを検証(きちんと利益が出せるか?)
二、不動産初期投資で、開業時の総額予算配分を検証(限られた予算内でまかなえるか?)

出店者の多くは、一旦契約してしまったら、仮にそれが間違えた基準の物件だとわかった後でも、その物件を手離さず、そのまま計画を突き進めようとする傾向があります。

まずいな、とわかっていながらも、逆戻り、仕切り直しなど一切考えず失敗に向かっていくと言っても過言ではありません。後に後悔しないためにも慎重な物件探しの基準を持ちましょう。

物件決めはカウントダウンのスイッチON!

出店計画は「まず最初にやるべきは物件を決めること!」この基準は根強いものです。
日本政策金融公庫や銀行融資でも物件が決定していなければ正式な審査してもらえません。
また、物件が決まっていなければ店舗のデザイン設計、店舗工事も一切進めることができません。
だからこそ、最初に物件を決めなければならない。

この認識が、無知な出店者を「物件探しからスタート」という行動をさせています。

物件取得には敷金(保証金)、礼金、不動産仲介手数料、前家賃と・・・早速、多額のお金が流出します。

特に前家賃は、早速初月の家賃の先払いになります。

出店者は物件契約をすると、一気に冷静さを失います。
店が無いのに、家賃流出が始まるのです。

契約直後の流出家賃は開業者を大混乱に陥れる!

これが俗に空家賃(からやちん)と言われているものです。
店が無いのに払う家賃、いわゆる、“空振りの家賃”です。
不動産契約直後から発生する家賃支払に誰でも一気にパニック状態に陥ります。

すると、

「家賃を1ヶ月~2ヶ月、絶対に無駄にはできない!だから、大急ぎで店を作作らなければ!」
この無謀で強引な判断となります。

誰でも夢の出店に様々な夢を抱いてきたはずです。その理想のお店を、冷静さを欠いた精神状態で立ち上げていくことになるのです。その延長上で、とてもいい加減な店作りをしていくことになるのです。

長い間、頭に描き続けてきた “夢、理想、こだわり”を、すべて自らの決断で “やっつけ仕事”にしてしまうわけです。
特に独立開業は創業融資あっての計画です。しかし、融資には物件が特定している必要があります。

また、融資決定までにはある程度の期間が必要となります。(1~2ヶ月)
なにより融資決定なしでは、資金が用意できていないということ。融資決定後でなければ計画は進められないのです!

この重要な事情を不動産業者に説明し、家賃発生を遅らせてもらう交渉をする!
話し合い次第で無駄な予算流出は防げるかもしれません。

不動産物件の契約とは、資金流出の始まりのスタートボタン、すなわちカウントダウンのスイッチなのです。

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