開業当初からの順調な売上には「負の反作用」がある?

開業を実現して運営が始まると、初期の頃はなかなか売上が上がらないのが普通です。
特に開業から半年は、新規客獲得に精を出す時期であり、旧職場で体感していた忙しさとは程遠く、手応えを感じることはできません。
開業直後7割以上の事例が、初年度は辛く苦しい状況を味わうものです。

もちろん、中には開業当初から一気に順調な運営となる事例もあります。
しかし、このように順調な状況を得られたとしても、“好調の揺り返し”の様な逆作用もあるのです。

最初から好調に思える事例は、このようなパターンがあります。

出店した地の周辺には、あまりにも美容室が少なく、慢性的にその地が美容室不足。そのため、老若男女、誰もが店に押し寄せてきた。
そうすると、どうでしょう?早い時期から誰でも利用できるファミリーサロンとなってしまう傾向があるのです。
もちろん最初から「老若男女問わず誰でもOK!」を目指した開業であれば願ったりかなったり。
ですが、特異性を打ち出す個性的な店を目指していたとしたら?
例えば、本来は中高年、富裕層のハイセンスな女性の為の美容室を目指していた場合とか。
最初から誰でも受け入れていると、途中からの軌道修正は難しい。結局は、誰でもが来店する便利な美容室に方向変換せざるを得なくなるのです。

これでは、忙しくなり、お金も得られるけれど、本当にやりたかったことをやれる美容室とは程遠いですよね。
開業とは、開業前に目指した目的からかけ離れてしまっては意味がありません。

その他にも、こんなパターンもあります。

従業員を雇用し、開業半年以内で早くも月間売上が100万円に達するなど、とても売上順調なスタート。しかし、従業員の急な退職により次月から売上は一気に40%減…。
従業員の退職理由は、「旧職場の体感とは異なる忙しさに、耐えられない」あるいは「やりたい事と違ったから」などでしょうか。
すでに順調に売上げている状況の渦中で従業員の突然退職は、一気に売上を落とすことに繋がります。
開業1年未満の売上が不安定な時期に起こる従業員退職による売上減少は、新人経営者の開業オーナーにとっては手に余るもの。どう対応すべきか混乱するでしょう。
外から見れば開店したばかりなのに、お客さんがたくさんいればは非常に流行っているように見えるかもしれません。しかし、内部は不安定な状態という事例も多いのです。

誰でも最初から沢山のお客様が来店したら、どんどん詰め込んで頑張ってしまうでしょう。もちろんやればやっただけ、売上も上がります。
しかし、その裏側では、施術の品質が落ちてしまったり、お客様への対応が疎かになってしまったりと、その逆の作用も起こってしまいます。
順調な走り出しをしたからといって、好状況をそのままずっと維持できるかはわかりません。

開業後の1年間は、とにかく開業オーナーの心を揺らす、なにかと魔物のような力が働くものなのです。
大切なことは、どんな状況が起こっても、「最初に目指した路線を変えない」こと。
競馬で、馬がスタート直後にぶっちぎりで先頭を走っていても、結果的にゴールした時にはビリだった…こんな場面を見たことありますよね?
開業1年間は、慣らし運転のごとく、なによりも慎重に運営をする必要があります。スタートダッシュは禁物です。冷静に判断し、柔軟に対応する姿勢で、初年度の運営を行いましょう。

bh 飯島由敬・著書ご紹介

bh飯島由敬への『お店づくりサポート』ご依頼・ご相談

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA