どんな業種の店舗であっても、開業するときに、踏まないといけない手順はたくさんあります。

特に、最初の段階は重要です。お店をオープンさせること自体は簡単に実現できます。しかし健全な運営を継続し、10年以上の運営ができている店は全体の1割未満に過ぎません。すべては、開業時の計画にかかっています。まずは、安全で確実な開業方法を理解するべきです。

「なぜ開業したいのか?」その動機を整理するところから、開業計画を具体的に立てて実行に移すところまで、やるべき流れをまとめました。

[開業手順1. 開業動機と目的の明確化]なぜ独立して店舗を開業するのか?改めて自問自答

あなたが開業を願うのはなぜでしょうか。いろいろな理由があるでしょうが、それをひとつひとつ書き出すなどして、整理してみることが大切です。

単なるあこがれや夢だけでは不十分です

繁盛しているお店や、マスコミに登場するお店を見かけるとうらやましくなるもの。

「自分もああなりたい」と感じることは全然悪いことではありません。

ただ、漠然としたあこがれだけでは開業しても成功しません。開業してどうなりたいのか? そこをよく考えてはっきりさせることが大切です。

  • どんなお店を目指すのか?
  • よそのお店との違いは何なのか?
  • どんなお客さんに主に来てもらいたいのか?

これらすべてをあいまいなまま進めていくと、コンセプトが不明瞭なために早期閉店につながります。時間を惜しまずに、細かく決めていくべきです(下の段で改めてご説明します)。店舗開業の動機について、典型的な例をいくつか紹介させていただきます。

例)金銭上の目的~現状より、もっと報酬をほしい~

さて、店舗開業で大きな動機として出るのが「収入」です。
従業員として勤務する今のままでは、どんなにお客さんに気に入ってもらえても雇われているままでは、収入はなかなか伸びないものです。

この「今より、もっとお金が欲しい」という動機は、正当な動機です。ただ、「今よりもっと増やしたい」といった不明瞭なものではなく「何年でいくら」などと明確な目標を立てる必要があります。

例)サービス上の目的~理想とするサービスをお客様に提供したい~

雇われている時は、勤務するお店の方針に従わないといけません。しかし、その店や店長のやり方に共感できないという不満を持つ方も多いものです。

たとえばお店の方針で、自分はあまり良いと思えないものでもとにかく売らなければならないというノルマなどがあり、無理な接客からお客様の気分を害してしまったといったサービス面での問題が生じることもあります。このような要因も、実は独立を考える大きな動機になります。

例)勤務時間・勤務体系上の目的~働く日・時間や職場の環境を変えたい~

勤務体系、収入面など、雇われの身である人にとって、よく不満を感じる点です。

■勤務時間・・・残業がとにかく多い!拘束時間が長いわりに、待遇に反映されない。

■休日・・・休みが少なかったり不規則だったりと、休日に関する不満を抱える人もいることでしょう。

また、お客様に対してだけでなく「一緒に働く仲間にとっても幸せな環境を作ってあげたい」といった動機も考えられます。
このように「なぜ、私は独立をしたいのだろう」「今の職場の何が不満なのだろう、どうしたいのだろう」というポイントを考えることで、あなたが開業したい店舗の原点が見えてきます。

[開業手順2.コンセプト構築]コアターゲットを想定して社会的役割を明確にする

コンセプトという言葉は様々な意味を持つ言葉ですが、店舗開業においては「コンセプト=社会的役割」だと捉えることが大切です。

「社会において、どんな役割を果たすお店なのか?」この点をはっきりとさせるべきです。

そこが固まれば

  • どんなお客さんを集めるのか?
  • 集まったお客さんに、どんなサービスを提供するのか?

どちらも自然と、見えてきます。

店舗のコンセプト~提供サービスとコアターゲット~

ここで役に立つのが、先ほどご説明した「現在の店に対する不満」および「どんな目的で開業するのか?」です。

たとえば「今の店と違って、こんな商品も提供する店にしたい!」なぜならば、
→「日頃、要望がとても多かった客の悩みを解消するお手伝いができるから!」という提供したいサービス(社会的役割)を明確化します。

そうすると、客層も見えてきます。それを更に細かく、「性別は?」「何歳くらい?」「どのような社会的な地位?」「どのような家族構成?」などと想定していきます。そうしてコアターゲットを確定させます。

店舗のコンセプト~店舗イメージ(空間コンセプト)~

コンセプトやコアターゲットが決まったら、それを提供するためにベストのロケーションや、店舗イメージ(空間コンセプト)が見えてきます。
あくまでも「理想客(コアターゲット)が最も喜びそうな環境、すなわち店構えを追求すること」が重要です。

社会的役割が決まれば、コアターゲットが決まり、店舗イメージが決まってきます。
店構え先行でコンセプトと捉えてしまうと、もしかしたら、これは自分が最も来てほしい客が好きな空間ではないかもしれません。

[開業手順3.事業計画]収支・採算性のチェック、資金調達方法、実行予算想定

事業計画を立てるときは、収支をできる限り明確にしなければいけません。

店舗工事の資金にしか目を向けない方も多いのですが、それだけでは不充分です。

以下の3点を慎重にシミュレーションする必要があります

  1. いくら稼ぐのか? (収支計画)
  2. いくら用意できるのか? (資金計画)
  3. いくら使うのか? (実行予算計画)

収支計画は月ごとに計算します。

まず、月当たりの総売り上げを計算してください。

美容室他サロン系のお店なら
「客単価×毎日の来店客数×月あたりの営業日数」

月会費制の教室やスタジオ系の施設なら

「会員数×月会費」
で計算できます。

次に、経費の総額を計算します。
材料費や光熱費、賃料や人件費、債務や広告宣伝費……と、さまざまな目的で経費が発生するはずです。

最後に、総売り上げから経費の総額を引き算します。
その結果がマイナスになるようであれば、赤字になってしまうことを意味します。

資金繰りをどうするか? 自己資金から融資の利用まで

どれくらいの資金を用意できるのかをしっかり考えてみてください。

検討できるのは以下のような方法です。

  1. 自己資金
    いわゆる、預貯金等。
  2. 借入金
    [家族や友人等に借りるという手がありますが、←これは3へ]
    銀行などの金融機関や国民生活金融公庫のような公的な機関を利用するのが一般的です。
  3. 出資・投資
    お店コンセプトや事業計画を評価してくれる投資家を探すという手もあります。あるいは、もっとも身近なのは親や家族、友人などからの支援や出資を利用する方も多い。(融資機関側はこれも自己資金とみなしてくれる場合もあります)
    また最近はクラウドファンディングでお金を集めるという手も使えるかもしれません。

これらの中で、実現性が高いのは1と2です。

実行予算の想定~見落としのない事業計画を立てよう~

開業する際に必要となる費用をリストアップして、すべての予算配分バランスを把握する作業です。
店舗確保のためにかかる費用や備品の購入費用、開業からしばらくの間の運転資金ほか、さまざまな費用が発生します。

そして、重要ななことは実行予算の総額が、準備できる資金の総額を上回らないようにすることです。
オーバーしてしまう場合は、計画を大幅に見直さないといけません。

[開業手順4.物件探し]ターゲットの往来、居住に応じた物件選び

コンセプト(社会的役割)とコアターゲット(理想客層)を明確にできた段落を経てからはじめて物件探しの作業になります。
コンセプトにぴったりと合う物件を、焦らずに探すことがポイントです。

コアターゲットを集客しやすい物件を手に入れるために

現在は、店舗物件を探す方法がたくさんあります。その中でもいちばん使いやすいのは? やはりインターネットです。

現在のインターネット上の物件情報は詳細に掲載されますし、情報の更新も迅速に行われてとても便利です。

物件の情報の中でも、価格の情報は非常に重要なものです。開業したい場所がどれくらいの相場なのか、念入りに確かめてください。

※賃料については、坪単価の価格をまずチェックしてください。ちなみに1坪の広さは約3.3㎡(畳2畳分)です。

店舗をピックアップしたら必ず下見を

物件を絞り込んだら、必ず現地に出向いてください。店舗の内部については、広さ・高さから設備まで、じっくりと観察するべきです。

そして、周囲の状況もじっくりと自分の目で確認する必要があります。
「人通りが多い」「商店街に面している」「駅前である」……この程度では不充分です。
「ターゲットとするお客さんが周囲に多いのか」「求めるお客さんに、店に気づいてもらえそうか」……そのような着眼点でチェックすることも重要です。

店舗開業では、第一に動機・目的を明らかにする作業に集中すること必要があります。
それを踏まえて、第二に店のコンセプトやコアターゲットをはっきりさせる作業に取り掛かります。
第三に事業計画、第四に物件探しが待っていますが、とにかく第一~第二の段階が重要です。

それが失敗しない店舗開業の第一歩です。

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