店舗開業計画ができたら、次は実際にそれを実行するための段階に入ります。
開業資金を確保したり、店舗の設計にとりかかったりと、することはたくさんあります。それから事業計画とは別に、宣伝や販促の具体的な計画もこの段階で立てておくことが大切です。では、実際の店舗開業計画の実行段階の詳細を確認してみましょう。

[開業手順5. 融資]足りない資金を調達する

店舗開業において、必ずといってよいくらい難関となるのが「資金調達」です。

自己資金だけで開業できる事例は極めて少ないです。したがって足りない資金は融資などで調達する必要があります。ところが、この最初の資金集めができないまま開業してしまうと、初期の段階から店舗経営が成り立たずに早々に退店に追い込まれてしまう危険性が高まります。

お金を借りるなら?どこから借りるのが好ましいのか?

一般的な融資の手段は、以下の2通りです。

・日本政策金融公庫などの、公的な機関からの融資
・銀行や信用金庫など、民間金融機関からの融資

これらの手段は、以下のメリットがあります。
・全国どのエリアでも利用できる
・安い利息で貸し付けてもらえる

これ以外にも、貸金業者やリース会社はたくさん存在します。しかしこれらの調達方法の場合、利息が非常に高く、実際の運営では月々の返済額を増やすことに繋がり、収支面で大きなリスクになります。

では、日本政策金融公庫、銀行(信金を含む)のどちらを選んだらよいでしょうか? 銀行からの借入はもちろんそれなりのメリットがありますが、事前に銀行との取引がなかったり、何らかの紹介やコネクションが無い場合は、容易に融資が受けれないという事例が多く見受けられます。

一方、日本政策金融公庫からの借り入れは、銀行に比べると、紹介やコネクションが無くても比較的スムーズに融資をしてくれる可能性が高いです。多くの場合、独立開業においては、日本政策金融公庫からの融資を受けるケースがほとんどです。

ただし、融資以外の方法で資金を準備することも不可能ではありません。
たとえば最近は、投資がとてもさかんな時代です。クラウドファンディングのような手段はあらゆる業界で利用されています。
投資者・出資者からの援助を受けられるなら、とても有利な手段となります。
融資機関側も、資金支援をしてくれる人物が他に存在するということは、「開業者の信頼が大きい」または「成功する可能性が高い、と周囲に判断されている人物」として、融資審査上でも好印象になる可能性があります。

また、家族や親族からの資金援助も同様です。
特に親族の場合は無金利・無期限での資金援助をしてくれる場合や、返済不要の完全出資という場合もあるため、開業者にとっては非常に助かる要素となります。
どちらも返済という精神的な負担も大幅に軽減できますね。

独立開業計画における出費要素はたくさんあるが……どれくらい借りたらいいのか?

初めての店舗開業における失敗事例として、「開業資金の見立てミス」が目立ちます。何もないところから店舗開業する場合、必要な出費要素は驚くほど多いのです。

<代表的な出費要素>

  • 物件取得にかかる初期費用
  • 店舗設計・店舗工事の費用
  • 業種に応じて必要となる機器、機材等の購入費用
  • 店内に設置する家具、家電、備品他の費用
  • 商品や道具類などの初期仕入費用
  • 開業前後の広告宣伝費用
  • 開業後数ヶ月間の運転資金(家賃、人件費、固定経費)

……etc.

これらすべての要素の合計額が出費の総額となるわけです。

したがって、もしも融資額を読み違えて少額融資を実行した場合、オープンの前段階からすでに資金不足に陥ってしまいます。融資額を少なくして債務を減らすという考えはわかりますが、肝心の開業資金、運営資金が不足してしまっては、先々の経営が成り立たなくなります。

借入額は適当に決めるのではなく、各要素の予算をきちんと試算し、余剰金を含めやや多めの金額を借りておくという基準も重要です。

だからといって、日本政策金融公庫・銀行どちらとも、希望額をいくらでも貸してくれるというわけではありません。特に個人開業の場合は「無担保・保証人なし」での融資では、1000万円程が限界の目安金額です。

この基準で考えると、自己資金を含めても資金調達可能な上限額が、開業予算の上限ということになるわけです。

すなわち、自身の資金調達上限額以内で可能となる開業計画規模を想定して、予算組みを検討する必要があるわけです。

融資で失敗しないために/事業計画書の作成方法

日本政策金融公庫でも銀行でも、融資を受ける場合、事業計画書をはじめ、出店のために必要となる各業種の見積書など、複数の書類を提出しないといけません。

事業計画書は、融資審査において非常に重要なものです。
融資の担当者は、この計画書を細かくチェックし、健全な経営が成り立つかどうかを厳しい目で判断します。

「この計画なら、確実に利益を上げていきそうだな、きちんと返済できそうだな」と思われるような資料づくりが必要となります。

融資で失敗しないために/審査の受け方

さて、すべての書類、見積等がすべて提出完了した後に、正式な審査があります。

その際に、必ず審査担当者の面談が発生します。
審査では、事業計画書をもとに話が進められます。
したがって計画書がしっかり作成されていれば当然、審査も有利になります。

しかしそれだけでは不充分であると捉えておくべきです。

融資は担当する審査員の判断にもよりますが、さまざまな厳しい質問を投げかけられます。
それらシビアな質問に対し、すべて適切な回答ができなければいけません。

戸惑ったり、まごついたり、パニック気味に返答していると、計画性や開業者の能力がどんなに優れていても、一気に不利な状況に陥ります。

自分自身で作成した計画書の内容を確実に把握し、質問されたことは何でもハキハキ自信満々に返答できるようになるまで、実際に声を出して面接の予行練習を行うことをおすすします。

[開業手順6. 運営戦略]集客や売上を増やすための作戦を立てる

運営戦略は、開業後に考えるのでは遅すぎます。オープン後に、じっくりと作戦を練る時間の確保は非常に困難です。
仮に、ゆっくり考える時間があるようなら、それは店が暇であるということですね。

それよりも、運営がスタートしている時期というのは、まず冷静な戦略を立てられる精神状態ではいられなくなっているはずです。
すべては開業計画の初期段階に確立しておくべきなのです。

価格や店名は、いったんオープンしたら簡単に変更はできないものです。特に価格の変更は良いわけがありません。最悪の場合、客離れの原因にもなりうる要素です。

・客単価
客単価は、高すぎても安すぎてもいけません。
目的とするターゲットを踏まえて、競合店の価格を調べたりして、妥当な金額を探り出すことが大切です。
また、特徴となるサービスなども考えて客単価を設定する必要があります。
なによりも重要なことは、運営上しっかり利益が得られるような価格設定を意識する、すなわち収支面、採算性を追求する意識が最も重要です。

・店名
たくさんの利用客の方々に愛される店舗に育てていくにあたって、店の名前はとても大事です。
呼びにくい名前や長すぎる名前をつけてしまうと、なかなか覚えてもらえません。
電話応答の際に店側が発しやすいこと、また客側が聞き取りやすいこと、この両面が非常に重要です。
姓名判断の専門家に相談するなどコストや手間暇をかける方も少なくありません。
いずれにしても、「経営者の思い入れ」と「親しみやすさ」「コンセプト」などを考慮し、魂を込めて決めるべきです。

開店のお知らせとPR/費用対効果の高い宣伝手段とは

出店するとき、店舗の準備と並行して進めなければならないのが、集客の準備です。選べる手段には、主に次のような種類があります。

①有料の、Web広告

Webは、誰もが日常的に利用するメディア。美容室関係の情報もWeb上に大量に出回っていますね。
たとえば、パーソナルジムの情報を大量に収録しており、ユーザが簡単に地域のジムを検索できるようなサイトに、自身のジムの情報も掲載できたらかなりの宣伝になるでしょう。
割引等のサービスを併設しているサイトであれば、自然とネットユーザが集まりますし広告効果は総統に期待できますね。
しかしこのようなサイトを使う際は、デメリットがいくつもあることを知っておくべきでしょう。

  • その広告媒体を使い続ける限り、決して安くない料金を要求される
  • 割引を通して集客していると、収益面で不利になる
  • 広告を中断したとたんに、客が減るという不安を抱えてしまう

……etc.

したがって有料のWeb広告に頼ることのメリットデメリットを考えて利用するかどうかを検討すべきです。

②チラシの配布

チラシはどちらかといえばアナログな広告手段です。
時代遅れだというイメージも強いかもしれませんね。
確かに、1回や2回ではなかなか効果を実感できなくても不思議ではありません。

しかしチラシには、次のようなメリットがあります。

  • 近隣の住民に的を絞って集客できる
  • 店の周囲にリピーターを増やすきっかけになる

また、チラシには直接の広告効果以外にも、自分自身で集客をしているということによる自信と近隣の状況を把握ができるなどの感覚を身につけることにも繋がります。
ただし、チラシを見ただけで、訪問というわけには行きません。
現在では、チラシを見て興味を持ったら、そこからホームページをチェックするという流れが主流です。

あくまでも、チラシは自社のサイトへ誘導するための一つの手段として捉えることが大切です。

③ブログやSNSの活用

有料広告やチラシなどの手段で、ホームページへ誘導しても、そこでしっかりとした情報発信をしていないと、意味がありません。

店舗情報や価格などの基本情報はもちろんですが、ブログやSNSを使って、様々な情報を発信し続けることが重要です。

自身の店舗のサービス情報だけでなく、店主のプライベートな情報や近隣の飲食店や雑貨店など開業者自身がお気に入りのお店情報なども発信していきましょう。

やがて読者たちが、そんなその店にに行ってみたいなと思ってもらえるような個性的な情報を発信することが、継続的な集客効果にもつながってきます

[開業手順7. 店舗デザイン]店の雰囲気を大きく左右する、デザインの決定

お店を開くなら、自分自身の思い描いたコンセプトにぴったりの内装を実現したいところですね。ところが「建物や店舗のデザインを決める」という経験が豊富な開業者はなかなかいないでしょう。

デザインや工事の段階で失敗を避けるために、注意したいポイントをまとめました。

「デザイン」と「工事」は必ず発生しますが、両方ともに一手に引き受けてくれる業者はとても多く存在します。

このようにデザインと工事を1社にまとめて依頼したほうが良いのでしょうか?

「両方一括で任せたほうが、時間面でも費用面でも得だろう」……と、つい考えてしまいます。

しかし、もしも工事の見積に誤り、見落とし、欠点があった場合、開業者の基準では、それを検証できなないはずです。

それよりも、工事を請負業者の見積を、その会社と別に依頼したデザイナーと一緒に検証でするようにしたほうがあらゆる面で適正を追求でき、不具合を格段に減らすことができます。

どんな人物に依頼したらいい? デザイナーの選び方

デザイナーの使命は、「目指す世界観(デザイン)を実現化するための製作図(設計)の作成業務」だけだと思われがちですが、それ以外に「店舗デザインを工事業者に正確に実行させるオーナーの代理人業務(監理)」こそが重要な役目となります。

工事の専門知識が無い開業者さんが、工事業者にシビアで適切な指示を出すのは不可能です。
「デザイナーが、開業者さんにとっての知恵袋、工事業者の監視役、お目付け役として任命する」という基準が、デザイナーを選ぶ上で考慮すべき点です。

[開業手順8. 店舗工事]内装から設備まで、店が完成に近づく重要なプロセス

自分のイメージに合わせたデザインが決まり、工事用に図面が作成され、はじめてそれを実際に現実化する工事に入ります。施工内容に応じた工事金額の積算は非常に重要な判断基準となります。

入札(相見積または競争見積り)で慎重に業者を選ぼう

店舗工事費用が開業総額の中で最も大きな予算となります。

したがって、複数の工事業者に見積を依頼し、最も安い額面を提示した業者を選び出すべきでしょう。

ところが実際に複数の業者からの見積書を受け取っても、書かれている内容、専門用語の数々の適正や妥当性は開業者にはまず理解できないはずです。
これはその道のプロでないと理解できません。

だからこそ、工事業者とは別依頼したデザイナーに、専門的な目線で厳しく査定をしてもらうべきなのです。

工事中にありがちな、周囲とのトラブルを防ぐには?

これはどんな業種の店舗でも共通のことですが、建物や商業施設の工事がはじまると、周囲に思わぬ被害を与えてしまうことがあります。

たとえば工事の最中は騒音を立ててしまったり、振動をもたらしてしまったりと、苦情の原因は多岐にわたります。

工事が原因で、開店前に周囲との間に軋轢を起こしてしまうと、その後の経営に大きな支障をきたしかねません。工事の開始前に、周辺挨拶や工事のお知らせ等、事前に近隣の理解を得ておくことが大切です。

開業後に後悔しないために/電気・ガス・給排水設備には要注意!

特に美容室店舗のような業種の場合、電気設備や給排水、ガス、通信設備など、さまざまな設備が欠かせません。

これらの設備の過不足は今後の運営上、非常に致命的な要素となります。

実際に開業してから設備の不備に悩む美容室の事例を非常に良く耳にします。

  • 電気回路の不備(ドライヤー使用中に、ブレーカーが頻繁に落ちる原因)
  • 水道の不備(シャンプーの最中に、水圧が著しく下がってしまう原因)

もちろん、選んだ建物の構造上、設置や改善に限界がある場合もあります。
これに関しては、残念ながら物件の選び方に問題があったとしか言いようがありません。
(だからこそ物件選びの基準を持つことが重要)

このような美容室以外の業種であっても、職種によっては必要となる設備の元(電気、ガス、水道、空調)の状況は様々です。これらのチェックは非常に重要であることを覚えておきましょう。

また、意外とよくありがちな事例としては、実際に依頼したデザイナーや工事業者が依頼した業種の店舗の経験不足が原因により不備が生じている事例も少なくないのです。

このようなトラブルを防ぐには?

最低でも、ご自身の出店業種の実例経験が多いデザイナー、工事を多く請け負ってきた工事業者を選ぶことが重要です。

単純にセンスが良さそうだとか、様々な業種の店舗工事実例が多い業者だからきっと安心だろうと捉えるのは非常に危険です。
最低条件としてデザイナー、業者を選ぶときはそれぞれ、過去の実績において、その業種における仕事経験を十分に兼ね備えているかどうかが重要なのです。